H30年度 事業計画・報告

学習会 レポート  (H30年度)


月に2回実施している学習会からの情報発信レポートを連載します。


2018.5.10 5.24

~森林を良く知ろう~
 29年度に渡辺一夫氏の樹木の生き残り戦略の著書3編の内2編を学習しました。30年度前半には残りの1編(樹木19種)を学習します。
そして、学習した代表的な樹木の生育地に出向き学習する機会を持ちます。後半には、森林の生物多様性の学習に進めます。
 毎月、本ぺージで毎月一種づつ、学習した樹木を紹介します。

<使用テキスト>
 「アジサイはなぜ葉にアルミ毒をためるのか」 渡辺一夫著 築地書館
 他、生物多様性の教材

     
5月の学習項目は以下の通りでした。
○5月10日
進め方の説明、輪講講師決め
ネムノキ~働くために眠る~ 井村j
○5月24日
ガクアジサイ~森を捨てる技~
ヤマグルマ~変わり者の魅力~
野澤
ドロノキ~攪乱の歴史を伝える~
ヤマツツジ~火の島が生んだツツジ~
担当吉江

ネムノキ ~働くために眠る~  井村 淳一(会員)

ネムノキ
・マメ科 ネムノキ亜科 落葉高木 樹高10m位 陽樹で荒地に最初に侵入する先駆種
・分布:イラン、アフガニスタン 中国、朝鮮半島 日本は本州 四国 九州
・葉は2回 偶数羽状複葉
 花は頭状花序的に枝先に集まって咲く
 夜になると葉を閉じる就眠運動をする。これが名前の由来になっている。
・花:淡紅色でオシベが長く ブラシのような花
・果実:扁平で細長い豆果 長さ10cm程度の豆状の果実
・樹皮:灰褐色で平滑。いぼ状の皮目がみられることがある。

美女にたとえられた花
・松尾芭蕉が秋田県南部の象潟で詠んだ俳句
 “ 象潟や 雨に西施が ねぶの花 ”
  西施(せいし):中国の春化時代に生きた絶世の美女のこと。

目立つオシベで虫を呼ぶ

・ブラシの毛を広げたような独特の花で、毛の根元は白く、毛先がピンク色で毛の先端に黄色い葯がついている。ネムノキの花には虫を引き付けるような花弁がない。
その代わり、長くて色鮮やかなオシベを沢山つけて虫を呼んでいる。
メシベは複数のオシベの中に混じって存在するが白くて目立たない。オシベが役割を終えて落ちる頃目立つようになる。

メムノキ
・頂生花:ネムノキは虫たちに花粉を運んでもらう報酬に蜜を提供する。
ネムノキの花は沢山のオシベが数十本づつ束ねられていて、それらの束が集まってブラシのようになっている。
蜜はブラシの毛の束の中で、一つだけオシベが中ほどで合着し筒状になっているもの(これを頂生花という)の底にある。他の束は側生花という。

緑化のために使われる
・ネムノキは塩害に強く、秋田県や山形県の海岸沿いの砂丘で防風林として古くから使われている。
・ネムノキはマメ科の木で根には根粒菌が共生していて、やせ地でも生きていける。
 また落葉には養分が含まれているので周りの土を肥沃にする。

河原にも多い先駆種
・河原はネムノキの得意な生育場所である。果実が豆果でそれを風で飛ばしたり、川に流すことにより遠くまで散布し、明るい場所で子孫を残すたくましい木である。

一日のリズムを持っていた
・ネムノキは夜になると葉をたたんで垂れ下がる性質がある。この様子が眠っているようなので「ネムノキ」の名が付いたという説がある。
・このような葉の開閉運動を「就眠運動」と呼ぶ。この仕組みは葉の付け根に少し膨らんだ部分(葉沈という)で、細胞の内部圧力(膨圧)を変化させて葉の角度を変えている。
・ネムノキの就眠運動は単に光に反応しているだけではなく、起きる、眠るという1日のリズム(概日リズム)があり、これに従って葉を開閉する。この概日リズムをコントロールしているのが体内時計で、就眠物質と覚醒物質があり昼間は覚醒物質が沢山でて、夜間は就眠物質が増える。

一日のリズムを持っていた
・ネムノキは夜になると葉をたたんで垂れ下がる性質がある。この様子が眠っているようなので「ネムノキ」の名が付いたという説がある。 何のために葉をたたむのか
・葉をたたむ目的は、乾燥よけだと考えられている昼間でも気温が非常に高い日は、葉を閉じていることがある。これも乾燥を避けるためであるが、光が強すぎて葉が傷むのを防ぐためらしい。
 (過剰な光を浴びると葉の細胞の中の活性酸素が発生し、葉緑素を分解してしまう。同じマメ科のフジやクズ等も同様に葉の角度を変える)
・1日のリズムを保つことは重要なことで、昼間は光合成を行い、夜は蓄えたデンプンを分解して代謝や成長をおこなっている。このリズムを維持することが重要。


        
6月の学習項目
○6月8日
八島が原湿原の観察 担当 井村e、黒田
○6月21日
ミヤマハンノキ~破壊を創造に変える~ 担当 南波
ズミ~変えるために生きる~
ウラジロガシ~渓谷を友として~
担当 石田


2018.6.8 6.21

6.8 八島湿原の観察    担当 会員(井村悦子、黒田キミ)

 今年は、昨年から学習してきた樹木を生息している現地で観察することになりました。
 第一回目は八島が原湿原です。八島湿原は標高1632mの高層湿原です。湿原の中には樹木は余りありませんが、湿原を取り囲むように生息しています。
 市民の森で見かけるアカマツ、ズミなどの樹木も樹形は大分違います。
 地元のメンバーから、昔と比べて湿原が乾いてきているような気がするという感想もありました。木道の下にはイタヤカエデの実生なども見られ、周辺の樹木が入り込んで樹林化していくのだろうかと感じられました。学習してきた樹木の知識を確認しながら、春の湿原歩きを楽しみました。

サラサドウダン(更紗灯台)
サラサドウダン
(更紗灯台)

ミズナラ(水楢)
ミズナラ(水楢)

ノリウツギ(糊空木)
ノリウツギ(糊空木)

レンゲツツジ(蓮華躑躅)
レンゲツツジ
(蓮華躑躅)

ツルウメモドキ(蔓梅擬)
ツルウメモドキ
(蔓梅擬)

ハリギリ(針桐)
ハリギリ(針桐)

イヌエンジュ(犬槐)
イヌエンジュ(犬槐)

カントウマユミ(関東真弓)
カントウマユミ
(関東真弓)

アカマツ(赤松)
アカマツ(赤松)

ズミ(酢実)
ズミ(酢実)

アケビ(木通)
アケビ(木通)

ダケカンバ(岳樺)
ダケカンバ(岳樺)


     
7月の学習項目
○7月12日
マテバシイ~昭和の夢の跡~
カナメモチ~赤くなるのは誰のため~
担当 定成
ハゼノキ~油を売って生き残る~
イスノキ~いつの間にか繰られて~
担当 黒田
○7月19日
モチノキ~姿かたちはつくられるもの~
アカエゾマツ~奇跡を生んだ忍耐力~
担当 井村e
ウラジロモミ~大きな大地に助けられて~
ホルトノキ~危機に瀕する名木~
担当 矢崎

2018.7.12 7.19

モチノキ ~姿かたちはつくられるもの~  井村 悦子(会員)

モチノキ
 ○モチノキ科モチノキ属 ○常緑高木 〇雌雄異株
 ○分布:本州、四国、九州、南西諸島、台湾、中国中南部
モチノキをめぐって、昆虫と鳥と樹木の間に複雑な関係が繰り広げられていた。

古くから鳥もちを採った木
主に暖地に分布する常緑樹で、冬でも常緑の厚い葉を茂らせ、刈り込みに強いので庭や公園、屋敷の周りの生垣に用いられる。
名前は、「鳥もち」に由来。樹皮をはがして水にひたして粘りのある鳥もちを作り、長い竿の先につけ鳥にくっつけて捕まえ、観賞用や食料にした。
・古くは万葉集に「もちどりの」という句があり、離れにくいさまを、鳥もちに引っかかった鳥に例えている。
・京都、室町時代には鳥を捕獲する専門業者(「鳥刺」と呼ばれる)がいて、武士、貴族を中心に鳥を飼うことが広まった。
・江戸時代になると、庶民にも一大ペットブームが起こり、鳥の飼育は人気があった。

海にそって広がった木
・モチノキの自然分布は本州、四国、九州のおもに沿岸部。冬温暖な海辺で生育しやすい。海辺の波しぶきに含まれる塩分も、クチクラ層というワックスの層でコーティングされた葉は塩分の侵入を防ぐ。
・暖地性の樹木であるが、東北地方の日本海側にも分布し、北限は山形県の酒田市の飛島。飛島は暖流の対馬海流で冬でも比較的温暖。飛島のモチノキは本土から鳥によって種子が運ばれ定着。
・飛島対岸の山形県遊佐町にある天然記念物に指定されている木がある。天保14(1843)年、今の持ち主の祖先が、庄内藩の命で、今の千葉県の印旛沼の疎水工事に出役(しゅつやく)した時記念として持ったもの。

鳥に種子を散布してもらう
雌雄異株だが、株単位に「性転換」をして雄株が雌株になったり、雌株が雄株へ変わったりするという。
実は直径1cm程で実に4つの種子が入っている。実は大型の鳥ヒヨドリなどが食べ移動して糞をする。
モチノキのタネは休眠能力を持ち、すぐに発芽せず、頭上が明るくなるまで待つことが出来る。

種子散布を邪魔する迷惑な寄生虫たち
・ムクドリやヒヨドリはモチノキと共生関係にある大事なパートナーだが、ミバエの仲間はモチノキの果肉に卵を産み、孵った幼虫は果肉を食べまくり実の中を糞だらけにする。
・コバチの仲間「モチノキタネオナガコバチ」は、夏に発育中の実に産卵し幼虫は種子の中で冬を越すが、このコバチはモチノキの実の色を操作し鳥の捕食を避けている。コバチは実を赤くならないよう何らかの植物ホルモンのような物質を分泌している可能性があるという。

産卵を妨害して反撃するモチノキ
モチノキもコバチにやられっぱなしではない。
・花粉を受粉していなくても種子が形成され、果実も成熟する。未授精の種子はすべての種子の3割にも達する。未授精の種子は子孫を増やすことに何ら貢献せず、コストだけが掛かっている。 コバチは受精した種子にだけ産卵するので、産卵管を苦労して挿入しても未授精の種子だと産卵せず別の種子を探す。モチノキはコバチに無駄な労力を掛けさせている。
・実を大量につければ鳥を誘引する宣伝効果がある。

雪に適応して進化したヒメモチ
モチノキの仲間のヒメモチは、海辺から離れ内陸で低木に進化した。
・積雪の多い雪国では低木が有利。雪に埋もれれば、低温と風による乾燥を回避でき、雪の下は零度以下にならず、湿度100%。
・雪に埋もれ地面に押し付けられ、接した幹から根が生えて新たな株(クローン)をつくる「無性生殖」(=「伏状更新」)で増えることが出来る。

海辺で生きる高木のモチノキ、低木として雪に適応して生きるヒメモチ、姿も生き方も違う彼らを見ていると、樹木が潜在的に持っている姿形や性質を変える能力に驚かされる。


     
8月の学習項目
○8月10日
麦草峠近辺 観察  担当 井村
○8月23日
エゾマツ~大地にうごめく見えざる力~ 担当 井村e
トドマツ~死が支えている生命~


2018.8.10 8.23

8.10 麦草峠付近の観察    担当 会員(井村淳一、井村悦子)

 8月9日 学習会のメンバー5人で麦草峠周辺の樹木の植生を調査にでかけました。
 渡辺一夫先生の樹木の生き残り戦略三部作で学習した樹木の内、トウヒ、シラビソ、オオシラビソ、ツガ等の群落の林の様子を観察してきました。麦草峠の駐車場から白駒の池に至る道は、ツガを中心にトウヒが混じる林を抜けると、大きな岩が重なる道に入りますが、ここは、ハイマツが一面に広がり、その中にゴヨウマツが混じっています。ところどころにサワラが侵入しています。
 白駒の池駐車場から白駒の池へ向かう道は、最初はツガの群落が続き、その林はシラビソの群落に変わって池まで続いています。その群落の中の下層には、ツガの群落にはツガの稚樹が、シラビソの群落にはシラビソの稚樹が一面に密生していて、次世代への交代のために待機しています。それらの稚樹の栄養は朽ちた倒木が補っている様子が良く観察できます。
 白駒の池の周回には、ツガ、シラビソの群落(もちろんダケカンバも混じっていますが)の中には下層に石楠花、ドウダンツツジ等の矮小樹が密生しています。中にはミズメが結構混じっていることが分かりました。
 周回を終えて、麦草ヒュッテまで戻り、昼食後、メルヘン街道を渡り雨池へ向かう道の途中に地獄谷があるので、その見学をしてきました。さすがにもう雪は残っていませんでしたが、気温はかなり低く寒い位でした。岩陰のヒカリゴケを観察した後、麦草峠の駐車場に戻り、観察会を終えました。
 14年前に見た白駒の池への道は、コケが密生してグリーンの色が見事でしたが、気候温暖化のせいか、コケの広がる林床は乾燥が進んできていてコケの色も褪せてきている様子が判ります。ササの侵入も目立っていて少し寂しい気持ちになりました。

ゴヨウマツ(五葉松)
ゴヨウマツ(五葉松)

ハイマツ(這松)
ハイマツ(這松)

コメツガ(米栂) コメツガ(米栂)
コメツガ(米栂)

シラビソ(白檜曽) シラビソ(白檜曽)
シラビソ(白檜曽)

オオシラビソ(大白檜曽) オオシラビソ(大白檜曽)
オオシラビソ(大白檜曽)

トウヒ(唐檜) トウヒ(唐檜)
トウヒ(唐檜)

ミズメ(水目) ミズメ(水目)
ミズメ(水目)

オガラバナ(麻幹花) オガラバナ(麻幹花)
オガラバナ(麻幹花)

ミネカエデ(峰楓) ミネカエデ(峰楓)
ミネカエデ(峰楓)

ガンコウラン(岩高蘭)
ガンコウラン(岩高蘭)

スノキ(酢の木)
スノキ(酢の木)


     
9月の学習項目
○9月13日
 本年前半では、昨年から実施している渡辺一夫先生の樹木の生き残り戦略3部作の3番目の著作である、「アジサイは何故葉にアルミ毒をためるのか」の学習を終えました。
 後半は「地質、地形と植生との関係」に関する本をテキストとして取り上げることになり、現在目的にあったテキストを調査中です。 決まり次第参加者の皆さんにお知らせして9月13日(木)から後半の学習会を再開する予定です。

私たちは、このような活動を通じて人と森林との新たな関係を作り出し、豊かな森林を次世代にバトンタッチしたいと願っています。